はるかぜ
麻生ゆり
あるうららかで暖かな日
ふらり散歩に出てみる
あてどなく歩いてみる
春風はどこか優しくて
さらり南から吹いてきて
私の髪をもてあそぶ
花開いたジンチョウゲの香りが
ふわりたゆたって
なぜかふと幸せな気分になった
川べりまで来ると
きらり高くなった太陽の光が反射して
思わず目をつむってしまった
そしてふと耳をかたむけると
ひとりウグイスが
恋の歌を奏でている
足元を見れば
のそりツクシの頭が
地面からのぞいていた
それからもっと目を見張ると
ぴかり黒光りするアリたちがせわしなく蠢くものだから
踏まないよう注意しよう
嗚呼、こうしていよいよ
ちょっとずつ春がやってきたのだ
今近づいているのは
間違いなく一年で最も麗しくも華やかな季節
春風はくるり
思いのほか優しく吹いている…