ビードロ細工の 生
鵜飼千代子
細い線が幾重にも重なり
光の角度で表情が変わる / カオ
カップボードの上では
塵で曇るから と
ダイニングテーブルでは
落としては と
ガラスの壁のその奥で
塵のかわりに誇りを
強さのかわりに向こう見ずを
育んできた
一度ガラスの壁を越えたとき
自由と引き替えの身近な最期
自由が楽しくてスキップ続け崖から落ちるか
自由と共に塵をまとった身を愛するか
いや もう壁の中に戻るか
ビードロ細工の 生
自由と引き替えの死は必然
誇りの前に 配慮はない
決めるのは わたし
触れるときには気を付けて
傷つくのは お互い
重さは それぞれ
光の向きにより
醜くも あり
輝きでも あり
YIB01036 1997.07.11. Tamami Moegi
初出 NIFTYSERVE FCVERSE
改稿 1998.02.10. 2002.07.17.
萌木碧水2002小詩集 水平線 所収