【夏】時間
月乃助


気づきませんでした
知らぬ間に
時を なくしていたのです
one hour ahead

そんなときはきまって
静かに 自分を抱きしめる
そうあることが、あたりまえなら
失うことなど こわくないのですから 
すこしばかり自分を投げ捨てるように
それでも、体は、あらがいながら

今宵は、眠れない、
daylight saving time

時間から解き放たれた
信じるなら、できるのかもしれない
奇跡でもなんでもない
そんな力は、誰もが持っているのに、

そう、嬰児の眠りは、変わることがないはず
人の作りだした時など 思いもせずに
安らかに、穏やかな 
母の体中で 何をきいているのですか
昼夜をおきざりにするように、生きる
頑なまでに 目を閉じたまま

時間ではないのです
眠りの中は、自由にきまっている
夢の果てはきっと、充足

昔は、こんなことをしなかった
誰もが、一つの時間に身をまかせて
生きていたのに、

人は便利さに、時間さえも変えてしまう

眠りのやってこない日
林檎の香りがほしくなったり
安堵をもたらしてくれる腕のぬくもり
昼間の時間が、長くなったのですね
誰もが疑いもせずに
月のない空に
眠ろうとする 春の夜

一人ばかり、
目を覚まして 夜の帳のその色を確かめながら
闇の一点に目をすえては、ただ 
眠りのやってくるのを 待っている
陽光にうずくまる 子どもを想えば
それは、遠い海の向こう
未来に暮らす子ども達

そこからなら、
私のいる過去はどうしたって、
愚かにみえるのかもしれない





自由詩 【夏】時間 Copyright 月乃助 2010-03-20 12:02:33
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