きみは行ってしまった
高梁サトル


春を待つ誰もの浮かれた気温の中
鉛のような重さを持って鎮座していた
深い霧の奥から一点だけを見詰める眼差し
臆病な羊たちのそれとは違う
狼の口元に漂う吐息を纏った鋭利な眼光
まるでそこだけが外部の侵入を拒む
未開の孤島であるかのように

あのように烈しく孤独な魂を私は求めていた

だのになぜ
手紙の言葉を考えている間に
きみは行ってしまった

取り残されたこのこころ

きみは行ってしまった
きみは行ってしまった
きみは…

嗚呼


自由詩 きみは行ってしまった Copyright 高梁サトル 2010-03-19 22:30:59
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