aTo
イシダユーリ

トイレの中を
赤い鳥が
泳いでいる
すっかり
無駄になったものは
なんて
きれい
捨て去ってしまう
ぜんぶ
胸ぐらを
つかんだ
手の硬さ
殴ろうと
思って
会った相手を
見下ろす
視線の冷たさ
殴れなかったな
殴る価値もなかったな
うまくやれなかったな
ふしあわせに
なれなかったな
鈍器のような
生活を
あたまに
結わえては
ゆっくり
路地を歩いている

インディアナの髪飾りににたふうにゆわえた 生活のペンダント
ファッションは裸をしばりつけるもの 
きれい きれい 血がとまる 涙はせきとめられる
ハロー を 言うために いくつもの 小さな ダムが
ひつよう インディアナ ハロー
植民地たち ハロー
ここで ゆっくり おやすみ 
ハロー ハロー 夜中じゅう ハロー で
ゆっくり おやすみ 

こいびとのことを
めちゃくちゃにしたくなる
だれも
だれかのものには
ならないことが
こんなにも
あたしの
こころのそこを
ひやすことが
あるなんて
しらなかったよ
赤い鳥が
およぐ
トイレに
めいっぱい
顔を
おしつけて
ここ
あなた
ココ
アンナ
あたしから
捨て去るもの
あたしの
すっかり無駄になったもの
きみが
はしから
食べてくれればいい
いやなかお
しないでほしいな
あたしの
したいこと
きみに
ぜんぶしても
いやなかお
しないでほしいな
たとえ
ころされたって
わらって
すきだって
いってほしかったよ
なんだってゆるして
ほしかったよ
いたい
じゃなくて
きもちいい
じゃなくて
もっと
べつの
もっと
べつの
ことばで
ただの
こきゅうで
すがりつくしか
なくなってほしい
じゆうなんて
いらないね
じゆうなんて
ころすよ
きみの
じゆうをぜんぶ
ころして
ぼうりょく
いたみを
わすれさせたら
ぼうりょく
ぜんぶ
じゆう
ころしたくて
けど
そうしたら
きみは
ただの
がらくたになって
すてるしかなくなる
すっかり
ほこりかぶった
おまもりみたいに
すてたいけど
すてられないものに
なる?

すっかり
流れ去ってしまった
赤い鳥
空は
いつも遠くで
鳴りわたる
うでを
ひろげて
まえをはしっていく
きみが
うえまつげと
したまつげ
くっつけて
おもいだしている
ばらばらの
風景のことを
あたし
しらない

すっかり理解しているんだ
にげていくんだなあ
にげろにげろ
って
さけんでいるんだなあ
おっかけながら
にげろにげろ
すっかり理解しているんだ
あたしのいちばんしたいこと
きみがいちばんいやがるってことを
すっかり

きみが
あたしのものに
ならないってことが
こころのそこを
こんなに
ひやすなんて
しらなかったよ
あかい
あかいもの
ながれている
からだに
あかい
あかいもの
ながれているのに
こんなに
そこが
ひえきっている
きみのことを
ほしい
といって
凍っていく


自由詩 aTo Copyright イシダユーリ 2010-03-19 14:26:49
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