ドライ
中原 那由多
ピエロの仮面を被っていた理由を
楽しくなかったからと言ってみたのなら
つまらない嘘をついたことになる
どうせかっこつけるんだとしたら
不器用な人間だから、と漫画の受け売りをしていたい
そう、上手に笑えなかったんだ
いつの時代もパンドラの箱は開けてみないと分からないから
着飾ることはあまり好きじゃない
そのためか、モラルの無い人間として度々扱われたが
王子動物園のパンダにでもなった気分で過ごしていた
与えられるだけというのはそれはそれで気楽だったが
気がつけば、死んだ魚のような目をしていたので
すぐに黒縁のメガネを買いに行くこととなった
世話しなく回り続けるファンの音には
いつも意識を掻き回されてしまう
熱帯魚に憧れてみても
知らない水槽の中には個性しか散らばっていないからと
つい言い訳に走ってしまい
勝手に一人で笑っている
目的地にさえ到着すれば
どんな近道でも遠回りでもかまわない
行き当たりばったりなモラトリアムでは
裸の街路樹に風船が引っ掛かっていて
それを見上げている間はまだまだ子供だから
背伸びしているくらいがちょうどいい