ドライ
中原 那由多

ピエロの仮面を被っていた理由を
楽しくなかったからと言ってみたのなら
つまらない嘘をついたことになる
どうせかっこつけるんだとしたら
不器用な人間だから、と漫画の受け売りをしていたい

そう、上手に笑えなかったんだ


いつの時代もパンドラの箱は開けてみないと分からないから
着飾ることはあまり好きじゃない
そのためか、モラルの無い人間として度々扱われたが
王子動物園のパンダにでもなった気分で過ごしていた
与えられるだけというのはそれはそれで気楽だったが
気がつけば、死んだ魚のような目をしていたので
すぐに黒縁のメガネを買いに行くこととなった


世話しなく回り続けるファンの音には
いつも意識を掻き回されてしまう
熱帯魚に憧れてみても
知らない水槽の中には個性しか散らばっていないからと
つい言い訳に走ってしまい
勝手に一人で笑っている


目的地にさえ到着すれば
どんな近道でも遠回りでもかまわない

行き当たりばったりなモラトリアムでは
裸の街路樹に風船が引っ掛かっていて
それを見上げている間はまだまだ子供だから
背伸びしているくらいがちょうどいい




自由詩 ドライ Copyright 中原 那由多 2010-03-18 23:37:45
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