気まぐれな虫かご
松本 卓也
泣いているかと思えば暖かく
微笑んでいるかと思えば寒い
まるで誰かさんのような季節
明日はどんな声を聞かせるの
笑顔さえ見られたら
それで満足だからとか
殊勝な戯言を口にして
もう少し素直に酔えたら良いのに
こちらを見ない双眸が
何も聞いていなかったように
瞬きしているだけだから
少しは思っていることを
教えてくれはしませんかって
問いかけるより先に
また一つ真新しく
また一つ無関係な事柄
話し出したりするもんだから
新しい水割りを口にして
頷くくらいしかやることがない弱虫を
瞳の中に入れてやってはくれんかね