光速
15フィールズ
(ねえ、誰かが誰かを愛するように、僕は僕を殺したくなるんだ)
春を見つけた君は
春を想うことをやめる
もう君の頭の中には
夏の雨さえ過ぎていっただろう
(もうすぐ、春だね)
色々なことが始まろうとしている
実際には何も始まったりはしない
君はそれを本当によく知っている
はるか地平線に君の背中が見えた
(君の眼が綺麗だなって、時々ぼんやりと思うんだ)
瞳を閉じて簡易的な世界を創る
そこで私を、君を、見つける
どこにでも行けて
どこにも行けない
(君は僕で、僕は君で、君と僕は、光の速度よりも、速く、速く、交差したんだ)
桜が咲き始めている
淡いピンク色の花を開いている
私はいずれそこに降る雪を想う
でも
(僕は孤独じゃない。だから、一人きりなんだ)
私はここにいて
君もここにいる
春はすぐそこだ
でもそれだけだ
(君の眼にはいま、冬がこびりついているね)