馬銜(はみ)
……とある蛙
夕陽の傾きかけた街の一角に
何人もの成人した人間の列が歩く
皆一様に下を向き黙ったまま歩き続ける。
歩いている間は生きていられる。
立ち尽くした人間は片っ端から
列最後尾をのろのろ走っている
ゴミ収集車のテールゲートに放られて
回転板に押しつぶされて処理される
だから黙々と皆歩いている。
その列が延々と地平線まで続く
鞭を振るうのも同じ人間だ。
彼らには鞭を振るうことが自分の誇りの全てだ。
誰から尊敬されることもなく
たまにゴミ収集車の回転板に頭を入れる奴もいる
それも立ち止まった奴と何にも変わらない。
そのときはあっと叫ぶものもいるが
直ぐに忘れ去られて列が一人分つまるだけである。
皆一様に馬銜(はみ)を噛まされている
馬銜(はみ)を噛まされた人間共の一人が
自分だったことに気づいて
すこし驚いたが、今更後悔する気もなく
そのままの道を歩いてゆく
噛まされた馬銜(はみ)のため
僕の笑いが歪んでいる
全ての人間の笑いが歪んでいる。
それが馬銜(はみ)と今歩くことの苦しさによるものだけではないことを
みんな知っている。