ひとりのナナ
あ。
視界の端っこでうたたねをしていたナナは
気付いたときにはもうそこにいない
寝る前にはいつも少しだけ読書をする
きりのいいところでしおりを挟んで本を閉じると
ナナはとってつけたようにそっぽを向いている
さっきまで隣で息をひそめて文字を追っていたこと
わたし、知っているのに
気分がくさくさしているときは
一人で寝っころがって好きな音楽を聴く
しかめっつらでイヤホンをしているわたしに
ナナは興味を示さない
ナナは
ひとりしかいないけれどナナで
ひとりしかいないナナで
ひとりどうしのともだちだった
時を経てわたしは大人になった
たくさんの感情が忙しくさせ
ひとりじゃない時間が多くなった
ナナはもうどこにもいない
ひとりだけのナナはきっとどこかで
誰かとひとりどうしになっているのだろう