転がる石のように
nonya
偶然に弾き飛ばされて
偶然に引き寄せられて
偶然に蹴り落とされて
偶然に抱き締められて
僕はここにいる
何気なく左を選んで
怖くて右に逃げ込んで
勇ましく左に踏み出して
泣く泣く右へ折れる
僕は際限なく枝分かれする
坂道の途中を転がり続ける
掌にのるほどの魂に
ありふれた模様の脂肪を着せて
どこかで貼りついたラベルは
もはや薄汚れて判別不能で
僕はのそりと昨日を忘れながら
僕はもそりと明日を愁いながら
坂道の途中を転がり続ける
かつては何かの原石だと
言われたこともあったけれど
どうにも意志が柔らか過ぎて
いまだに石にすら成れてはいない
でも
ここまで転がってきて思うのは
ダイヤやトパーズに成れなくても
気持ち良く転がり続けることが
一番大事なんじゃないかってこと
ナンバーワンには成れなくても
オンリーワンだと思い込まなくても
僕達は生まれた瞬間から
転がるように出来ているのだから
楽しく石ころのふりをしようってこと
キザにスラロームを描いてもいい
転がるまいと不様に頑張ってもいい
落ちた花弁をお洒落にまとってもいい
黙りこくって斜面に従うのもいい
際限なく枝分かれする坂道は
どれも同じ場所に
繋がっているのだから
転がり続けてしまう僕達は
誰もが同じ場所へ
向かっているのだから
転がり終えたその場所で
僕達は
本物の石になるのだから