harmonic simulation (for Leo and little adult) 上
Oz
僕は紫。生まれた時から紫。だからどうしようもない。本当にそう思う。
赤と青の里から遠ざかり丘の上の藁葺き屋根の小さな家でひっそりと暮らしている。
時々黄色がやって来てスープを作ってくれる。
昔、この家には真っ白な髪の女の人が住んでいたそう。黄色はその時からこの家の住人にスープを作ってあげている。
「彼女は別に病気とか、そういうことでは無かったの。ただ、髪は白く、30歳くらいで死んでしまったの。」
写真が並べられている。そこには彼女と彼女の膝ぐらいの小人たちが写っている。彼女はとても幸せそうだ。ただ黄色は彼らを知らないし、彼女から話を聞いたことも無いんだそう。
「彼女はとても静かな人だった。でも、とてもやさしい感じのする人だった。だからこそ、私は彼女に会いに来ていたの。」
「死んでしまう前日私は彼女に会ったんだけど、いつもと変わった様子は何も無かった。だから、扉を開けて椅子に座る彼女を見た時寝ている様にしか思えなかった。」
黄色は涙を流さない。どんなに悲しくとも。彼女曰く、心が渇れてしまっているらしい。ただ、彼女はよく笑う。本当によく。
僕らはずれているのだ。世界から丁度45度ぐらいずつ。類は友を呼ぶとは良く言ったもの。ひとところに集まって群れを成す。言葉は言葉をつかみ、心は心をつかむ。関係が深まれば深まるほど融け合い、混ざり、離れることが出来なくなる。
時期が来たのだ。コレ以上彼女を巻き込む訳にはいかない。彼女はとても綺麗だから。僕は淀んでいるから。