残像レトルトパウチ
15フィールズ
歩く
未来を消費して今になる
という表現が気付けば過去に変わっていく
思い付いた何もかもが遅い
電光石火のタイムラグ
歩く
可能性を存分に行使して
どこもかしこも同じ風景
同じようなカタチ
聞こえてくるノイズは
すべて同じ波形
耳を澄ませば
マンホールからため息が聞こえてきそうだ
止まる
残骸になりたい
と心を占める欲望もしくは希望もしくは不可能その可能性
とりあえず空から俯瞰して
ちっぽけな自分を把握する
けれど
目の前に目の前がない
君の姿がそこにはない
走る
微熱の感覚でキスをする
「愛してる」と訓練する
温もりは宇宙に押し流される
さっき、が随分と遠い
コンマ0.01秒の不信感
手が離せない
きっと君は痛いだろう
恐れと優しさはいつも隣同士だ
止まる
囲まれて孤独になりたい
ケースいっぱいに詰まった愛情を身代金に
僕自身をかどわかしたい
意味なんてないし
あるといえばある
意味の話なんてしていない
歩く
僕はどこかへ向かっている
この全部同じような
出来損ないのコントみたいな世界で
僕は歩いている
それしかない
僕らしく僕の足で
僕の体で
頭で
少し滑稽ではあるけど
でもきっと
どう考えて生きたって
ろくなもんにはならないんだろう
だから僕は
少し滑稽に生きてみたい
少しでも楽しい方がいい
と面白くもなんともない文章を書いた僕が僕に言い聞かせながら
僕は生きている
スキップ
致命的なタイムラグ
どこかへ消えた僕の思考
でも
それでいいと思える
よっぽど僕らしい
止まる
適当にハミングする
こぼれ出た不思議な音程が
どうしようもないリズムを刻んで
やさしく、やさしくループした