平明な言葉で・あなたのための花束・西洋美学史講義B
真島正人
平明な
言葉で
書くことに
勤めてみよう
※
さらさらと
あほらしいことを
書いてみよう
※
見る人が見れば
笑うようなものを
書いてみよう
※
コーエンが
途切れ途切れの
ハレルヤと歌った
※
愛の名の下の
ハレルヤ
愛の名の下に
正当化される正義
※
人を守るために
正当化される正義
正義が振りかざす
剣が
人を殺すことは
どうだ?
※
上が女郎部屋で
下が飲み屋のようなもの
※
投げやりに
言いたくなる
ハレルヤ
※
ほぼ正論だ
問題ない
ほぼ同意する
※
同意する
だが、この不安は何だ?
あなたの正論に
にじみ出てくる
じくじくとした膿は
いったいなんだ?
※
人のために
正義を振りかざす
素晴らしく極度化された奉仕の精神
鼻から吸い込んでいく花粉で
脳が
麻痺した図を
思い起こした
※
花粉は花の子供だ
のどもとで咲く
花が開いたら
脳は割れる
すべては皮肉だ
すべては
薄い一枚の氷
※
その冷たさが心地よい
※
正論
正しい言説
ポリティカリーコレクトとは
また少し違う
煮詰められた路地
※
正論
正しい言葉だけが
吐き出される
そこに恥はない
誇らしく胸を張ることができる
それは
赦されているという事だ
許されたくて仕方ない人たちが
安心と安全を求めて
正論を吐く
※
じくじくと
胸の奥でうずく
疑問
確かに正しい
完全に正しい
弱い人たちのために
正義感をふりかざしている
でもそこには
何か嘘が感じられる
その嘘が何なのかわからない
その人は本当に
そんなことを
考えているのか?
本当に誰かのために自分を奉仕しようとしているのだろうか
そうではないような気がする
違う本音があるのではないのか
※
二層化された
支持者
※
コーエンの
投げやりな
祝福、ハレルヤ
※
小島信夫が語った
「小説への奉仕」
※
二階の部屋にいたら
下から聴こえてきた
「ぶち壊れ、冷たくなり、壊疽した」
ハレルヤ
※
くそくらえ
※
断絶
※
断絶
※
断絶
※
ゆるゆると
上手くない口調で
話すこと
※
すんなりと耳どおりのいい話し方は
その人がその言葉を暗記しているからだ
暗記して話せばいいだけなら外国人でも完全に日本語を話せる
本当に考えながら
答えを導こうとするとき
人は淀む
※
クリアカットの功罪
※
クリアカットの功罪
※
ティヴィースクリーンニウツシダサレタ
※
「何の問題もない」
顔
顔
顔
※
バターを
求めなくなって
半年が経つ
※
ミルクも
もう要らない
※
フォークソングの
くすんだギターの音をすら
昔とは違う人が
使用する
※
それは脳の領域の発達と関係があるのかもしれない
※
音は音
詩は詩
竪琴は竪琴
死は死
想像力の欠乏
が
最大の弱点
※
下の部屋から聞こえる
聖歌が
日によって美しかったり
美しくなかったりする
※
意地汚い
子供の論理
※
子供の論理が根を変えずに
武装され
強化され
そしてとうとう大人の論理と
すり替わる
※
あぁ
『チェンジリング』
※
すり替わったあとは、
子供の論理の姿はもう
残滓すら見えない
しかし
それはどこか
その人に存在し
遠隔操作のようなもので
大人の論理を動かしている
超能力のようなものだ
よく
考えておくほうがいい
糸のようなもので
あるものとあるものがつながり
融合し
結合し
動かしあう
※
精神
※
糸
※
『秘められた』
※
それを選択したらどうなるか
それによって自分自身がどうなるか
を
よく考えてから選びなさい
どうすれば
あなたは
本当に助かるのか
※
すぐに答えを出すな!
※
集団
を
いとおしむ人を
信じるな
※
ちょっとした地震
※
眼鏡の度が合っていない
※
葡萄の房から
流れてくる血
※
本物の血
※
少しずつ
少しずつ賛同していくと
気がついたら
全部その人のものになっている
※
それが飛んでくることを
教えられたら
自分にぶち当たることを
まず想像しなさい
※
女学生の死
※
ねずみ色にもう少し淡いホワイトを落とし
模様を創る
※
女学生の死
※
ボート
※
おそらくは裏
の
意図があるのだ
そんな人が本当に
人のためを考えているはずがない
※
ミクロ経済をマクロ経済に当てはめ
他人の悲劇を自分に当てはめて
みろ
「かわいそう」
ではない
「俺じゃなくて良かった」
が大事なのだ
いいやそれだけではない
常に
『拡大と縮小を入れ替えて考えてみる』
事が大事なのだ
※
西洋美学史講義の
時間に
遅れた
教室に入ると
年老いた助教授が
美学について語っていた
「美は、本当は、存在しません。何かを美しいというと、それは嘘なのです。その人は、美を、冒涜しています。誇りのかけらもないやつです。僕は、そいつを憎みます。いいですか、美しいものは、ある一方から、ある角度から見て、美しいものなのです。それは、違う方向から見ると、醜です。醜い、腐乱した、でこぼこのものです。すべてが、そうです。いいですね。言葉に、誇りを持ってください。言葉に敏感であれば、嘘はすぐに、わかります。それが何をどこに持っていこうとするのか、言葉から、推測してください」
そして、
画布を撫でて
いとおしそうに
撫でていたのだ