平明な言葉で・あなたのための花束・西洋美学史講義B
真島正人

平明な
言葉で
書くことに
勤めてみよう



さらさらと
あほらしいことを
書いてみよう



見る人が見れば
笑うようなものを
書いてみよう



コーエンが
途切れ途切れの
ハレルヤと歌った



愛の名の下の
ハレルヤ
愛の名の下に
正当化される正義



人を守るために
正当化される正義
正義が振りかざす
剣が
人を殺すことは
どうだ?



上が女郎部屋で
下が飲み屋のようなもの



投げやりに
言いたくなる
ハレルヤ



ほぼ正論だ
問題ない
ほぼ同意する



同意する
だが、この不安は何だ?
あなたの正論に
にじみ出てくる
じくじくとした膿は
いったいなんだ?



人のために
正義を振りかざす
素晴らしく極度化された奉仕の精神
鼻から吸い込んでいく花粉で
脳が
麻痺した図を
思い起こした



花粉は花の子供だ
のどもとで咲く
花が開いたら
脳は割れる
すべては皮肉だ
すべては
薄い一枚の氷



その冷たさが心地よい



正論
正しい言説
ポリティカリーコレクトとは
また少し違う
煮詰められた路地



正論
正しい言葉だけが
吐き出される
そこに恥はない
誇らしく胸を張ることができる
それは
赦されているという事だ
許されたくて仕方ない人たちが
安心と安全を求めて
正論を吐く



じくじくと
胸の奥でうずく
疑問
確かに正しい
完全に正しい
弱い人たちのために
正義感をふりかざしている
でもそこには
何か嘘が感じられる
その嘘が何なのかわからない
その人は本当に
そんなことを
考えているのか?
本当に誰かのために自分を奉仕しようとしているのだろうか
そうではないような気がする
違う本音があるのではないのか



二層化された
支持者



コーエンの
投げやりな
祝福、ハレルヤ



小島信夫が語った
「小説への奉仕」



二階の部屋にいたら
下から聴こえてきた

「ぶち壊れ、冷たくなり、壊疽した」
ハレルヤ



くそくらえ



断絶



断絶



断絶



ゆるゆると
上手くない口調で
話すこと



すんなりと耳どおりのいい話し方は
その人がその言葉を暗記しているからだ
暗記して話せばいいだけなら外国人でも完全に日本語を話せる
本当に考えながら
答えを導こうとするとき

人は淀む



クリアカットの功罪



クリアカットの功罪



ティヴィースクリーンニウツシダサレタ



「何の問題もない」






バターを
求めなくなって
半年が経つ



ミルクも
もう要らない



フォークソングの
くすんだギターの音をすら
昔とは違う人が
使用する



それは脳の領域の発達と関係があるのかもしれない



音は音
詩は詩
竪琴は竪琴
死は死
想像力の欠乏

最大の弱点



下の部屋から聞こえる
聖歌が
日によって美しかったり
美しくなかったりする



意地汚い
子供の論理



子供の論理が根を変えずに
武装され
強化され

そしてとうとう大人の論理と

すり替わる



あぁ
『チェンジリング』



すり替わったあとは、
子供の論理の姿はもう
残滓すら見えない

しかし
それはどこか
その人に存在し
遠隔操作のようなもので
大人の論理を動かしている
超能力のようなものだ

よく
考えておくほうがいい
糸のようなもので
あるものとあるものがつながり
融合し
結合し
動かしあう



精神







『秘められた』



それを選択したらどうなるか
それによって自分自身がどうなるか



よく考えてから選びなさい

どうすれば

あなたは

本当に助かるのか



すぐに答えを出すな!



集団

いとおしむ人を

信じるな



ちょっとした地震



眼鏡の度が合っていない



葡萄の房から
流れてくる血



本物の血



少しずつ
少しずつ賛同していくと
気がついたら
全部その人のものになっている



それが飛んでくることを
教えられたら

自分にぶち当たることを
まず想像しなさい



女学生の死



ねずみ色にもう少し淡いホワイトを落とし
模様を創る



女学生の死



ボート



おそらくは裏

意図があるのだ
そんな人が本当に
人のためを考えているはずがない



ミクロ経済をマクロ経済に当てはめ
他人の悲劇を自分に当てはめて
みろ

「かわいそう」

ではない

「俺じゃなくて良かった」

が大事なのだ

いいやそれだけではない

常に

『拡大と縮小を入れ替えて考えてみる』

事が大事なのだ



西洋美学史講義の
時間に
遅れた

教室に入ると
年老いた助教授が
美学について語っていた

「美は、本当は、存在しません。何かを美しいというと、それは嘘なのです。その人は、美を、冒涜しています。誇りのかけらもないやつです。僕は、そいつを憎みます。いいですか、美しいものは、ある一方から、ある角度から見て、美しいものなのです。それは、違う方向から見ると、醜です。醜い、腐乱した、でこぼこのものです。すべてが、そうです。いいですね。言葉に、誇りを持ってください。言葉に敏感であれば、嘘はすぐに、わかります。それが何をどこに持っていこうとするのか、言葉から、推測してください」

そして、
画布を撫でて

いとおしそうに

撫でていたのだ


自由詩 平明な言葉で・あなたのための花束・西洋美学史講義B Copyright 真島正人 2010-03-14 16:31:31
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