きみに届くように
あぐり
声高に
きみに言おうか
あいしてるって
それからすごく、痛いんだって
夢の底ではいつも誰かがわらっていた
ふつり、と水泡がわたしの口から漏れていくのだけれども
ここからはそれが浮かぶであろう水面は見えません
小さくまるまって
誰かがわたしを責めるのを待ってる
金魚草に絡む指を
眺めるだけの眼差しで
今朝もきみをみつめていたんだろうか
わたしの眼はちゃんと
きみにぬくもりをあたえられているんだろうか
わらっているんだろうか
あいせているんだろうか
(怖い、怖いよ)
冷え切ったからださえも
きみのかなしみには及ばないんだろう
わたしが高らかに言える言葉はいつだって
ごめんなさい、だけです
くるぶしをかすめて
名前も知らない古代魚が泳ぎ去っていく
溺れることもなくひとり
ただこの底で呼吸をしている
水の中なら、吐いたものが見えるから、
わたし、そういうの好きよ
声高に
きみに言おうか
あいしてるって
それからすごく、痛いんだって
あいたいって
さみしいって
やっぱり離れたくないんだって
なにもかもにきみの影が残った部屋にひとりなんだって
まだきみとみたいものがあるんだって
話したいことがあるんだって
嫌わないでよ
嫌わないでよ
そばにいてほしい
髪を撫でてほしい
泣かせてほしい
あいしてるって
あいしてって
わたしをあいしてって
声高に言おうか
この夢から覚めた時には きみに
きみに届くように