無音の稲妻
……とある蛙
小川の流れと
雑木林の枝にとまって
口を開けている
唖の小鳥たち
黒雲から発し
丘をひっぱたいて消える
無音の稲妻
晩年のルートヴィヒの無音の凄みか
音の階段の中に
突然現れる稲妻
単音の凄み
(ここまでのどかな田園風景)
ついでにテンションもほしい
ひろみの作る音階は
テンションに溺れる。
雨垂れの脅迫に負け
テンションに溺れる。
うるさい騒音の中の
テンションに溺れる。
無音の稲妻
光の中
テンションに溺れる。
流れるモード
論理で歌えず
テンションに溺れる。
都会の交差点
行き交う大量の自動車から
クラクションの嵐
横断する大量の人
人人人
の筈
騒音の中に無音の状態
言葉は無い
大声での罵り合い
大声での嘲り
コミュニケーションするための
言葉は無い。
都会の午後
押し黙った人々の隊列が行く
行くあてなど分からないが
日の沈む方角だ
誰ひとり立ち止まろうとしない
歩きながらの休息
そこへ一閃
無音の稲妻