S / ****'99
小野 一縷



うねり跳ね のたうち踊り 旅が始まる
二拍子の行進曲の煽動力
生々しい乗り物
つまらぬ旅程を打ち破り
膨大な慣性を秘め 一直線に放たれた
・・・危機感 六番目の感覚を針で刺す

進路変更減速不可
生々しい乗り物
存在を希薄にする速度
意識は剥がれ落ち 遠く霞む線上に破棄される
手を離すな 自我の結合力

つなぎ止めた一つの意識で
何百もの眼が迫ってくるのを感じとる
しかしどうだ 速度差がありすぎる
後塵を浴びて 一瞬き
そして目玉どもは気付くだろう
標的を逃したことに
飼い主とともに ただただ呆然とするがいい

グラムあたりの燃焼の差が違うんだ
キチガイの火の馬は 乗り手までも薪にする
騎手の目は 炎に炙られ黒焦げだ
深黒い眼球に滲むのは 濃縮された景色ども
・・・危機感 五つの感覚に拍車をかけた

速度よ 衝撃よ
停止という概念を持たぬ お前らに
居場所などありはしない
轟々と進行せよ 
お前らの息吹が聞こえる
お前らの生命を感じる
俺はお前らの中に宿る

速度よ 衝撃よ
目指す その一点は「約束の地」か?
唯一 お前らが指し示す点
景色も意識も時間も収束する 一点
答えが確実ならば もっと鞭をくれてやる
         もっと薪をくべてやる

さあ 彼の地へと この抜け殻を連れて行け!


携帯写真+詩 S / ****'99 Copyright 小野 一縷 2010-03-13 12:14:01
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