一年と半年住んでいる七畳の部屋から
331歩
その角を曲がる瞬間にはいつだって
轢かれることを夢みてる
交わることのない飛行機雲
沈丁花の押しつけがましい匂い
片耳で鳴り響く洒落た言葉
今日もわたしは焦げ付くほどの熱も持てずに歩いてる
どうしたらいいんだろうかって
誰にどこに言えば善いの
なにかがおかしいのかもしれないけれど
それにぴったり嵌るようにと自分のかたちを変え続けてきた
きみの背中
その肩胛骨の間のやわらかなくぼみがわたしの居場所だと言い張りたくて
あんなにも温かい肌をわたしは知らない
きみのにおいを思い出しては
道の真ん中でうずくまりそうになるから少し、
息を吸った
今、
轢かれてしまえば、
わたしにはなんにも残らない
それで善いよって笑えてたのは三年前で
今はきみの顔を思い出すから
立ち止まって左を見ては
瞳孔に力を込めて歩き出す
あやまらなくていいんだよって、
(そう髪を撫でたきみだけに
やっぱりあやまりたいんだ)
332歩目から息を少し吐いて
きみと繋ぐために少しでもこの手を温めようとしている