『たそがれ』
東雲 李葉
たそがれ
誰もいないベッドの上で
待っている
自分以外の濡れた声を
秒針が時を刻む
決められた時間を
浪費する
有限の命を持て余して
どこにも行きたくないよ
どこにも行けやしないよ
諦めて
夢にも似た今現在
疑って
ここが誰かの夢の中だと
まさぐって
シャツの下のやわい温もり
噛み切って
喉笛を晒して泣き叫ぶ
どこかへ行けるの
どこまで行けるの
たそがれ
輝けない生命が一つ
落ちていく
帳が瞬きを奪い去り
閉じていく
蕾は春を識らないままに
でも、
待っている
有限の命を使いきるため
どこかはどこに
わたしはここに