海辺の罪人
salco
アダムの髪は砂地を伝い、
汀をくぐってたゆとう線は
海原をどこまでも、恐らくは
水平線の際までも延びているのではないか
日焼けて荒んだ、どこか呆けた顔をして
あらぬ方を見てるのは
あれは彼方の御国の緑なす丘を吹き渡る
風の行方を追っているのか
それとも果たさぬ約束を思い出そうとしているのか
しかし岩のよう
砂に生えたブロンズの屍のよう
アダムは動こうとしない
何処へも行こうとしない
輝くばかりの可憐なイヴは
アダムの肩の辺りで笑んでおり
柔らかな睫毛を庇に明眸は伏目がち
だが眠たげではなく
潮風に盛んになびく髪の毛は
露わの丸い胸を弾むように打ち
なめらかな白い腹で撓い
頬を撫で耳にそよぐ風のまにまに遊ぶよう
羽ばたくよう、唄うよう
それでいて、地を這いもせず波を漂う事もなく
男のいかつい腹や腿、こわばった脹脛や足首に
幾重にも幾重にも、
幾重にも絡みついている