海辺の罪人
salco

アダムの髪は砂地を伝い、
汀をくぐってたゆとう線は
海原をどこまでも、恐らくは
水平線の際までも延びているのではないか
日焼けて荒んだ、どこか呆けた顔をして
あらぬ方を見てるのは
あれは彼方の御国の緑なす丘を吹き渡る
風の行方を追っているのか
それとも果たさぬ約束を思い出そうとしているのか
しかし岩のよう
砂に生えたブロンズの屍のよう
アダムは動こうとしない 
何処へも行こうとしない

輝くばかりの可憐なイヴは
アダムの肩の辺りで笑んでおり
柔らかな睫毛を庇に明眸は伏目がち
だが眠たげではなく
潮風に盛んになびく髪の毛は
露わの丸い胸を弾むように打ち
なめらかな白い腹で撓い
頬を撫で耳にそよぐ風のまにまに遊ぶよう
羽ばたくよう、唄うよう
それでいて、地を這いもせず波を漂う事もなく
男のいかつい腹や腿、こわばった脹脛や足首に
幾重にも幾重にも、
幾重にも絡みついている


自由詩 海辺の罪人 Copyright salco 2010-03-11 23:16:24
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