腹話術師の唇
楽恵

友人のパペットは詩人です。
有能な助手である腹話術師は、実はシャーマンです。
もちろん彼は左利き。
そして真白いシーツの手術台にいつも乗せられて
セルロイドの顎をカタカタ鳴らして話しているのが、
精霊である僕です。
可愛いでしょう。
パッチリおめめの、
透き通っていて、ときに夜光虫のような。
花を満載した車輪の下が
黒革のベルトで固定されています。
これが呪術です。
本邦初公開。
すでに後悔しています。

 
                冬の荒野を飛ぶ鳥が白い呼吸となり
                息はやがて青い電気の嵐となって
                宙の一点に集められる。
                赤い唇。
                く、ち、び、る。

                ・・・来る。
                風が吹く!
                ああ、怖い。
                こえ!
                生命の声!


耳を澄ませてください。
腹の奥底から声が聞こえてきます。
パペットの詩を朗読するべきです。
まずは神おろし。
そして声変わり。
でも断っておきますが、
世界を操っている黒幕なんて、初めからいませんよ。


自由詩 腹話術師の唇 Copyright 楽恵 2010-03-11 21:14:49
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