春のてまえ
あ。

間違えないで、空


ざくざくと刻んで煮込む白菜も
頬を薄く赤く染める風の痛みも
機械みたいにぎこちないゆびさきも
そろそろ片付けようと思っていたのに


ちらほらと芽吹いている梅の花に
新しく買った薄手のパーカーに
使わなくなってきた暖房のリモコンに
ぼちぼち模様替えをしていたのに


間違えないで、空


出鼻をくじかれた、と言っていいのか
一歩踏み出そうとしたその足を
引っ掛けられてつまづいたような
寒の戻りは余りにも突然ちくちくと刺さる


すすけたような色の厚い雲は
視界の全てに広がっているけれど
かき分けたその先には青があったり
例えば艶やかに何かが咲いていたり
例えば上着が軽くなっていたり
例えば開け放した窓があったり
するのかも知れない


新たに取り出した日常、と
知り合えたらいいと思う


自由詩 春のてまえ Copyright あ。 2010-03-10 23:40:11
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