テーブルから
しべ

楕円の皿にわたしの指紋が乗る
楕円 私は 指紋のひとだ

ゆらゆらと少し苦い棒茶をすする
大鉢の下は銅の網が敷かれ
光沢もない

格子戸から黴がこぼれる
吹き抜ける風と
カーブミラーを揺らす車たち

お箸は ずっと、シルエットもそのまんまだ
 柱はそのまんま。おいしそうな柚子

タクシーの黄色い横面が
騒がしくウインカーを出し
ぼやけながら右折して
角の金物屋の郵便受は
取り残されて赤いか

塩辛いスプーンを舌に運び
よく噛む

ガラス戸の向こうに、枯れ枝

まんまるく昼の月をはさんで
小皿と蟻


自由詩 テーブルから Copyright しべ 2010-03-10 14:41:48
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