テーブルから
しべ
楕円の皿にわたしの指紋が乗る
楕円 私は 指紋のひとだ
ゆらゆらと少し苦い棒茶をすする
大鉢の下は銅の網が敷かれ
光沢もない
格子戸から黴がこぼれる
吹き抜ける風と
カーブミラーを揺らす車たち
お箸は ずっと、シルエットもそのまんまだ
柱はそのまんま。おいしそうな柚子
タクシーの黄色い横面が
騒がしくウインカーを出し
ぼやけながら右折して
角の金物屋の郵便受は
取り残されて赤いか
塩辛いスプーンを舌に運び
よく噛む
ガラス戸の向こうに、枯れ枝
まんまるく昼の月をはさんで
小皿と蟻