禁弾 / ****'04
小野 一縷

山脈のようなオウロラの荒波に生まれる渦の中心へ
螺旋状に繋ぎ合わされた音符が捻れた旋律となって注ぎ込まれる


歓声と悲鳴 奇声と怒号
明動 脈動する大気
その揺れを揺り篭にして触れる空気の波形を右肘の皮膚で感知する
大波 漣 肌を登る うなじの横を舐められる その空気圧に
その数値の冷たさに竦んだ体毛の根 毛穴の縮まりの収縮率に比例
触覚と知覚を混ぜた攪拌比率


廃墟のビルの渓谷流れる水銀の 夕陽へと紅く照り返す
紅い塊 小さな太陽が降り注ぐ 沸騰するビル風は次々と上昇する
黒い気流 死んだ彼方の子孫の魂がくすんで暗く陰る
墓は融け落ちた 沸騰する水銀の波辺 熱い銀色の飛沫を浴びて


暗算より速い計算法
第6のとか7番目のとか もう言うな 
それらはとっくに使い古し 遅く不安定で しかも味どころか熱も無い
いいかげん17番目辺りの感覚にものを言わせるのに任せろ
愛って感覚はとっくに越してる それは12番くらいのことだ


言葉は馬だ 道具だ こうして使える
自前の道具には 病的に拘るタイプだ


馬の そのシャープな筋力 美の脚線 鋼が鈍く光る足
縮こまってブーツの中で脚が萎れちまった奴は 
ここで降りろ
救助は来ない 自由勝手に 但し這って下山しろ


分かるだろ 切れそうなんだ ここで
きみとぼくを繋ぐ理解の糸が
感情の糸は随分前に切れている いや
繋がってすらいなかった


あんたは あんただ
じゃあ 俺がぼくだ


分かるだろ 切れそうなんだ
ぼくと世界を繋ぐ糸が
遠い子孫達が ぼくを未来から呪っている
それは DNAに関わりのあることについてだ 


ぼくは彼等の運命を握っている
無色だったはずのそれらは
紅く黒く
銀の先端から滴る血の弾頭に濡れて


ぼくの血筋は ぼくの血液によって汚される





自由詩 禁弾 / ****'04 Copyright 小野 一縷 2010-03-10 13:31:29
notebook Home