好物はブロッコリー。
時雨
初めに。
始めから言い訳を述べる時点で僕の情けなさがわかる。
いつかの君のように一言『ごめん。』と言えたらよかったのに。
必死に考えた言い訳を述べるよりよっぽど簡単で、
お互い、楽になれたのに。
いまどきの草食系男子と言ってしまえばただそれだけで。
それでも君とはなかなか上手くやれていた。なんて、そんなのは幻想で。
あの暖かな穏やかな空気は君が作ってくれたもので、
『二人で作った甘い空気』それは完全な勘違いだった。
二人で居れば笑えたね、(君がいつだって笑わせてくれたから)
二人で居れば楽しかったね、(君がいつだって楽しそうだったから)
二人で居れば幸せだったね、(君がいつだって幸せにしてくれたから)
何がしたいとか、何処に行きたいとか、
全部君が決めてるようで、全部僕に合わせてくれてた。
(本当はホラー映画が好きだったなんて、知らなかった)
(本当は中華料理が苦手だなんて、知らなかった)
僕の左前を半歩先に進む君がいつも迷って不安がってたなんて、そんなこと
知ろうとさえしなかった。
『草食系』ってたぶん間違いだ。
僕は醜い魚だ。
モノも言えない魚。
小さな水槽が世界のすべてで。
貰える餌が世界のすべてで。
君という名の水が無くなって初めて生きられないことを知った。
もう遅いけど、
ごめん。