名残
たもつ
雨上がりの軒下で
兄はひとり
シュレッダーになった
わたしは窓を開けて
要らなくなったものを渡す
最新式なのだろう
やわらかな音と振動で
兄は細断していく
ダイレクトメールや領収書などの
紙類だけでなく
偏平足の人形
もういない人の衣服
文鳥の死骸も
上手に細断してくれる
悲しいことは今までもすべて
兄が請け負ってくれた
要らないものはあらかた終り
これからは必要なものや
大事にしていたものまでも
処分しなくてはいけない
まだ所々に兄の名残がある
せめてもの慰みに
わたしは虹の見える方角を教え
わたしの指をあげた