名残
たもつ

 
 
雨上がりの軒下で
兄はひとり
シュレッダーになった
わたしは窓を開けて
要らなくなったものを渡す
最新式なのだろう
やわらかな音と振動で
兄は細断していく

ダイレクトメールや領収書などの
紙類だけでなく
偏平足の人形
もういない人の衣服
文鳥の死骸も
上手に細断してくれる

悲しいことは今までもすべて
兄が請け負ってくれた
要らないものはあらかた終り
これからは必要なものや
大事にしていたものまでも
処分しなくてはいけない

まだ所々に兄の名残がある
せめてもの慰みに
わたしは虹の見える方角を教え
わたしの指をあげた
 
 


自由詩 名残 Copyright たもつ 2010-03-08 23:02:47
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