バスレフ
ねなぎ

タバコに火を点けた所で
向こう側に置いて来た言葉を思い出して
話を遮り
スピーカーを磨いている

振動板は
電気が無くても震える
何も信号が無くても
震えている
本能のように
基本のように
音は出ないのだ
けれども

音の無い部屋の音は
聞いている積りの言葉を
向こう側に置いて来た

そのまま
忘れてしまえば良かったのに
思い出してしまうから
話かけようとして
音が出ない

未整理フォルダに
置いといた言葉が
クリーナーで消去された
多分
乾式では無かったのだろう

振動板を爪で弾いても
アンプは黙ったままで
言葉を探しても
何も言えない

繰り返される
同じ音に反発するように
爪で弾いて行く
信号は言葉に変換されず
伝わる事は

多分

無い

伝えたい事も無い

空の箱に薄っぺらさが
震えている
持っている言葉も無く
震えている
それが音なのか言葉なのか
箱にはどうでも良い事

煙を吐き出したところで
話が中断されてなかった事を
思い出した
繋がらず響かず伝わらない
信号は宙に煙と漂う


自由詩 バスレフ Copyright ねなぎ 2010-03-06 02:11:30
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