赦さないでよ、繋がってたい
あぐり




理想も語れない傲慢な気後れをきみに感じてから
多分これが三度目の春で
この冬も結局
きみと雪を見ることはなかった

安全剃刀はいったい誰にとって安全なのかわからなかった頃
ぼくの安全地帯はきみと手を繋いで囁きあう群青の夜だけだった
小さな金魚鉢で泳ぐぼくらに呼吸を教えてくれ、と
それを何に乞えば善いのかも気付かないふりをしては
耳にかかる柔い髪の先にすら
なんだか遠い明日を見つけて泣きそうだった


ぼくはやっぱり
まだ階段も怖いわけで
小さな白い欠片すら捨てられないんだよ
きみがどんな顔でぼくに言葉を書いて
きみがどんな声で
本当はさみしいんだ、って
そう呟くのかも知らない儘に離れてしまった

ぼくに抱かれないきみを
傷付けたいだなんて思っていた青褪めた日々に
それでもぼくの傍にいてくれたことが
いつかこの指の感覚を死なせてしまっても
それがぼくの望んだことだと笑えるよ

まだきみにありがとうが言えないぼくを赦さないで
きみが泣いていた時に
しあわせを感じていたぼくを
どうか赦さないで。




自由詩 赦さないでよ、繋がってたい Copyright あぐり 2010-03-05 21:40:16
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