ほころび
たもつ

 
 
ささやきが切符になる
私は列車に乗ることを許される
植物の蔓などでできた
自動の改札を抜ける
切符に自分が記録される
ホームへと続く階段を上る
一度も下ったことなどないのに
誰かのつくった列車が
ひとりでとことこと到着する
扉が開くと中には
海が広がっている
遠浅なのだろう
どこまでも海の中を歩く
服のほころびを見つけると
取り返しがつかなくなるまで
指でいじるのが好きな子だった
何となく春になるところまで
行きたかった
聞こえてくる波音が
身体の外に溢れないように
耳をふさぐ
 
 


自由詩 ほころび Copyright たもつ 2010-03-04 23:55:42
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