ゴンドラ乗りのセレナーデ
楽恵
人魚が落とした真珠のピアス
水の都の旅人を
沈む陽が遠く海を染めるまで
静かな寂しさに導いてくれる
遠い日の面影だけ映して
消えた貴女を追いかける
黒く塗られた渡し船は
揺れる水面の輝きを抱いたまま
舳先の潮風に向かって
ゴンドリエーレの歌を聴く
運河の青は深いインクのよう
告白が許されるのなら
私は今も貴女に憧れている
貴女があの人を愛したように
同じくらいの空の深さで
月が昇る頃までには
その微笑みにたどりつきたいから
宵の明星が永遠にきらめく場所で
私を待っていてほしい
恋人の優しい嘘よりも
金色に輝く魚のように泳ぐ貴女を
これから夜を迎えるアドリア海に探したい
(貴女の心に、私の心を重ねて)