列の向こうで烈しく輝く太陽は決して俺の足下を照らすことが無い
ホロウ・シカエルボク





列の向こうで烈しく輝く太陽は決して俺の足下を照らすことが無い
唇にこびりついたフルーツの香り、俺はいつも何かひとつ子供じみた失態を犯してしまっていて
記憶のノートをめくり返すときはいつでも、同じ頁でいたたまれない思いになる
小さな雨が延々と降る木曜日は哲学者がもっとも嫌うだろう袋小路のどん詰まりを想像させる
俺は哲学者じゃない、だけどちょっとしたゲームみたいにそんななりをすることは出来るぜ
嘘をつくことに尤もらしい理由を被せたら芸術って呼ばれかねない
面白がるのは構わないけれど小難しくし始めたら事態は複雑になるんだ
濡れた交差点に立って小さな声でサイモン&ガーファンクルを歌うことさ
それをどう受け止めるかなんてたぐいの話はしていない、少なくとも、いまここでは
受け取るときにどんな顔を作ってみせるのか、そのことについてもっとよく考えてみた方がいいな
ヒントが多すぎる謎々なんかをずっと面白がったりしていちゃいけない
複雑に絡み合った糸をあらかた解いてその中に何が隠れていたのか目の当たりにするとき
本当の快感がそこにあることに気づけるかもしれない…もしもいままでそのことについて何も知らなかったのなら
いま一番近くにある本を始めっからじっくり読み返してみるべきかもしれないぜ
思考はリズムするべきだ、もっともっと深いところへ楽に潜って行けるように
脳下垂体を激しくグラインドさせて意識をほどよくちらかすのさ、どこからが意識的でどこからが無意識なのかぼんやりと気づけるように
すべての考えの中を新しい風が吹き抜けるのをしっかりと感じるべきさ
考えの停止したやつはそこで最後さ、そんなやつの頭の中にはピーナッツみたいな間抜けな確信がたったの一個転がっているだけさ
信号が青になったら交差点を向こうへ渡るんだ、一番シンプルなプロセスの中にこそ心理が隠れていること立ってあるぜ、流れを見つけたら乗ってみるのもひとつのアイデァだ
どんな風にしたい、どんな風にして向かいの歩道に渡りたい?方法は無限にある、危険なものから安全なものまで、いつも自然に選択しているんだぜ
列の向こうで烈しく輝く太陽は決して俺の足下を照らすことが無い
それならば俺はその太陽のことを選ぼうとは考えなくなるかもしれない
あるいは別の手段を使って自分の足下を明るく照らすかもしれない…そこに満足があるかどうかはまた別の話さ、判るだろう、受け止め方を間違えるのはちょっと恥ずかしいことだぜ
列の向こうで烈しく輝く太陽は決して俺の足下を照らすことが無い、それなら俺はまずその太陽に名前をつけよう
どんな名がいい、アダム、アリス…太陽は男かそれとも女なのか?判るわけないから中性的な、どっちともとれる名前にしておこう…
俺はノートを開いて太陽のイラストを描き出す、さて、そこから動き始めるんだ…






自由詩 列の向こうで烈しく輝く太陽は決して俺の足下を照らすことが無い Copyright ホロウ・シカエルボク 2010-03-04 17:31:36
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