始まりと終わりに架かる橋
相馬四弦

橋を渡る行列が

途切れることなく続いていて

とても不思議なのです

わたしもその行列のどこかに

紛れているのです

右隣には暗い顔をした紳士が歩いています

左隣には固まった笑顔の婦人が歩いています

後ろに誰がいるのかはわかりません

振り向いてはいけないのです

決して

振り向いてはいけないのです

誰も何もしゃべりません



川のにおいがします

さわさわと流れが聞こえます

みんな歩いていきます

足音は聞こえません

そういう不思議なのです

とにかく歩いているのです

誰も何も知りません



この橋の向こう側には

終わりがあります

終わりです

そこで終わろうとしているのです

だけどもわたしは

ほんのすこし気になったのです

列を飛び出して欄干を跨いで

目を閉じて流れに身を落せば

このカラダは何処へ運ばれるのでしょう

そこにも終わりはありますか?

わたしは歩きながら

そう思ったのです

ひたすら歩きながら

ときどき心で呟くのです

潮の香りに引き寄せられてしまうことの

この憧れは、とてもすてき、だと

そういう不思議なのです






自由詩 始まりと終わりに架かる橋 Copyright 相馬四弦 2010-03-04 12:24:28
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