イメージ・散乱
within

双児の肉片を
野良猫が咥え
片鱗に花を咲かせて
モリアオガエルを
抱き寄せる

ふと夜空に顔を上げて
星の瞬きを見つめても
あなたは落ちてこない

赤が赤があることに
素直に頷けなくて
繰り返し 繰り返し
近付けたり 遠ざけたり
行ったり 来たり
鏡に映して
赤を見た

ひとつの数式のように 美しく完結したくて

放たれた言葉が
巡りめぐって
ぼくを背後から襲う

遠ざかる夕闇
冷気と暖気が混ざり合って
雨粒が落ちてくる

けれどもあなたは落ちてこない

ドロップ 落ちてくる
ドロッと 放たれ
頬を伝う

赤い海を渡り 電車に揺られ
連れてこられた小さな家に
よりどころのないうたかたの
液体のような粒子のぼくは
よりどころのないうたかたの
弾けて消える潮の呼吸の
痕跡をなぞる

隙間だらけの町に
ひしめき合う死者の累累たる
墓場は都市のように
幻影がひしめき合い

ほくは疎開する

ビットレートを落として
粗い矩形波の世界へ
逃走を図る


自由詩 イメージ・散乱 Copyright within 2010-03-04 11:07:26
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