箏曲:ダニの半透明のボディーを通して見た家賃7万2千円 西日暮里編
salco

あんたの指だったらいつでもオッケーなの、とねえちゃんは言う
だってアタシは処女なんだから、あんたの事しか考えてないよ
他の男なんか全然良くないんだけど、借金は返さないとね
だからアタシを慰めて、今夜もくすぐって笑わせてと
6月いっぱい洗わなかったシーツの上でねえちゃんは言う
男はみんなあばずれが好きだがな、指を突っ込んでオレは言う
敬意を以て尻軽を遇する男なんか一人もいねえよ、わかるだろ?
頭の中に海岸があるんだ、波打際を歩く白い服の女
涼しい目と桃みてえなほっぺた、きれいな歯で笑う女を夢見ている
あんたらの夢なんか知ったこっちゃないよ、とねえちゃんは言う
だってアタシが海じゃないさ、いつでもあんたは飛び込んでいい
懐かしいふる里で泳ぎ回って、あんたの子供を2億匹放流するんだろ?
そしたらアタシは太陽を焙るフライパンみたいに尻をひと振りするよ
3日歯を磨いてないオレの口に唇を寄せてねえちゃんが言う
お前なんかただの穴ぼこさ、朽葉色の髪をつかんでオレは言う
見飽きたツラとおっぱいが垂れ下がっている便器でしかねえよ
見てみろよ、煤けてたるんだてめえの腹、虫さされと痣だらけの尻を
笑ってないで早くしゃぶれよ、オレをいい気持にしてくれ吸血鬼
うんうん待って、あんたの指は細くてすごくいい、とねえちゃんは言う
だってアタシは処女なんだからさ、乱暴にされると破れちゃう
他の男なんて一人も知らないの、あんたの面倒看るためなんだよ
一緒にこんな天国で暮らそうよ、ねえこのまま地獄で朽ち果てようよ
穴ぼこに突っ込んだ指の間から血を流しながらねえちゃんが言う
男はみんな処女が好きだがな。苦心しながらオレは言う
お前のことなんかこれっぽっちも愛してないよ、誰とでも寝る女なんかと
親にもダチにも紹介できねえ女なんかと地獄に堕ちてたまるかよ、第一
ダニの卵だらけの蒲団のどこが天国だ? 締まりのねえココの何が極楽だよ
うふふ、と笑ってオレのをくわえ、立たせながらねえちゃんは言う
わかってないねえ、天国なんだよここはダニ達にもアタシ達にも
だからアタシは救命ボートを洗わないじゃないか、あんたが乗ってから
洗剤と漂白剤は絆をだめにするんだよ、おまじないを消しちゃうからね
そしたらあんたが帰って来られなくなるだろ? アタシは誰を待てばいいの?
何のために売ればいいのさ、他の男達なんか全然良くないのに
それもそうだな。見飽きた天井の木目を仰ぎながらオレは考える
大穴さえ出せばいつでも出て行けるんだ、雨ばかり続いている
今は時機じゃない、すえた部屋でテレビは退屈でも靴は濡れなくて済むしな
確かにこの女は救命ボートに違いない、道端で拾ったダイアモンドに違いない
考えごともいいけどほら見てごらん、あんたの指が立派だよ、とねえちゃん
んん? 他の女じゃこうは行かないね、結局アタシじゃないと駄目なんだよ
細い指なんか世の中には使い道がないんだもの、何の役にも立たないからね
アタシのココに入って置くしかないのさ、アタシをくすぐって笑わせるしか
あんたの指は気持いい、月の光より優しくて具合がいいよ、とねえちゃんが言う
そう言やそうだな。またがり漕ぎ出したねえちゃんを見ながらオレは考える
気持よくなって来るにつれて、こいつの萎んだツラが白く輝き出して
オレにはお姫様に見える瞬間がある 固い雪玉を空高く投げた時みてえに
すると引潮の海原にオレの子供が2億匹放流されて一斉に泳ぎ出すんだ
その後は見たくないし知りたくない。だから赤い紐でその一瞬を捕まえないと
魔法がかき消える前に止めないといけないんだろうな、とオレは考えている
くすぐりの絶頂で笑うこいつのツラは卒塔婆みてえでへし折りたくなる
あと50回くらいコスったら、あの一瞬が来るんじゃねえのかな。


自由詩 箏曲:ダニの半透明のボディーを通して見た家賃7万2千円 西日暮里編 Copyright salco 2010-03-03 21:37:22
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