パピルスのポエム
海里
ひとは詩を
いつから声に出して読まなくなったのだろうか
ひとは詩を
いつから紙に書くようになったのだろうか
こんなにも紙が溢れてなくて
字が読める人そのものも限られていた時代には
詩はそれこそ人口に膾炙するものだったはずだ
人々の口に
口伝えに
羊皮紙や
パピルスや
ロゼッタストーンの余白に刻まれた詩もあっただろうか
神殿の石組の目立たないところ
粘土板や亀甲などにもキリキリと一字一句
硬くて
何か尖ったもので刻まれた
落書きのような詩がきっとあったはずだ
自分の名
恋人の名
神の名
祈りのことば
呪いのことば
それからきっと自作の詩
自作でなくても愛唱していた詩
歌われること以外に
好まれて記憶され暗唱される以外に
目のためだけに
目だけを頼りに
時間と距離とを
はるかに渡って行こうとしたのは
むしろ言葉たちの方だったかもしれない