Mother, Wife, Sister, Daughter
楽恵
太陽の下で、町には向日葵が咲き乱れていた。
待望の赤ん坊は、女の子だった。
腕のなかに眠る小さな娘をみて
母親は待ち望んだ願いがついに叶えられたことを知った。
夫は、妻である母親を顧みることがなかったので
彼女の愛と願望は日々満たされることはなかったが
今度は小さな娘が彼女の夢と理想になった。
母親の愛を一身に受け、娘は育った
娘には夏の西日のように密かな夢があった
それは自分の小さな妹を得ることだったが
向日葵の町でその夢が叶うことはなかった。
娘は母親の期待通りに成長したが
年頃になると革命思想に魅了され
母親と向日葵の町を捨て、遠い都に去った。
娘は都で革命家となり
同志である革命家の夫と結婚した。
都には娘を姉のように慕う若い女がいた
革命の都で、娘は念願の妹を得た。
けれど娘の夫は、彼女の妹である若い女と
許されない恋に落ちると
その女を連れ、異国に去った。
娘が眠る窓辺を見上げたまま
お姉さん、と小さく呟いて
彼女の幼い頃からの本当の夢は、都を去った。
向日葵が咲く頃
娘は都と思想を捨て、夜明けの町に帰ってきた。
町の入り口で娘が佇んでいると
遠くから朝焼けに染まる石畳の道を
痩せたひとりの女の影が歩いてきた。
女の影に気づいた娘が微笑むのと同時に
向日葵の町にも陽が昇った。