ガム
あぐり



ひとつき
ほど前に買ったまま
カバンのポケット
いれっぱなしだった
甘ったるいイチゴの味は
ストロベリィ、と
呟けば
いっそう上顎にまとわりつく

今日、きみの町に帰ってきたんだ
みどりの電車
雨上がりの町を
乾いたこころで歩くのは
思っていたより難しくて困ってしまった
右、の
奥歯。
ガムを噛む

きみの町にきみはいなくて
最後に会ったのはほんの三日前
わたしはきみを笑わせるくらい泣きじゃくり
それでもきみが帰ったあとにまた
声をあげて泣きじゃくり

噛んでる
奥歯のガムはストロベリィ
ぎゅうと
噛んで
ぎゅぅと
噛んで
少し力を抜いた瞬間
あなたの匂い溢れだし
立ち止まっては
また噛みだす

(うしろにほくろがある、
きみの
やわらかなみみたぶ

コンビニに並んでたらいいのに)

舌先で押し潰したら
ストロベリィは苦かった




自由詩 ガム Copyright あぐり 2010-03-02 12:05:52
notebook Home