まどから顔を突き出すと
この静かな町に
雨が迫っていた
雨粒を抱え込んだ
雲のにおいがする
そのとおり、
空の向こう側に
雲の壁ができていた
雲は
群がって
ひとつの大きな生命を
織り成している
そのさまは
僕たちにも似ている。
※
雨がやがて降ると
土を
人を
ぬらすだろう
稲はぬれて
喜び
草蛙は
雨にお礼の歌を歌うだろう
歌に引き寄せられて
メスが
歩いてきて
求愛も
するだろう
けれども
雨がぬらすのは
曲がりくねった
道、
土くれの
世界だけではなく
僕たちの
口の中にまで
浸透する
すでに唾液にぬれた口が
まだ
水を受け取ると
僕はどうなってしまうだろうか。
※
やさしい午後
つづれ織の生命
謳歌の声と
雨の気配が
交じり合って
それも、また
ひとつの図になる