セルバの雨
楽恵
ラッパ鳥のダンス
応える相手のない
悲しい求愛のダンス
ふさがれたふたつの耳孔の奥では
季節のほとんどが熱帯の雨に閉ざされている
光る螺旋を降る
大気は息苦しく湿ったままで
密林の川を滑ってゆく
世界は夜も朝も
深い森林の雨に閉ざされている
大きな蟻が黒い列をつくって
死んだ獣の屍を落葉の下に運んでいく
荒々しい足音がする
木漏れ日の閃光を飛び越えて
蔓の絡みついた太い樹の枝から枝に渡る
猿の甲高い鳴き声が響く
絶えることのない猥雑な生命が
止むことのない雨の密生に聞こえてくる
ラッパ鳥のダンス
誘う相手のない
悲しい求愛のダンス
両手にふさがれた耳孔の奥では
世界は夜も朝も
密林に降り注ぐ熱帯の雨に閉ざされている