Ang.
イシダユーリ



いい加減に
貼りつけられた
  sun 
もうずっと
霧がすごい
おじいさんが
たちどまって
咳きこんでいる
  son
軍隊にとられた
女にとられた
腕と
脚と
ばらばらに
されて
涸れきった
川に
投げこまれたんだ
  sos
すがりつきたい
指を
くいこませて
しっかりと
骨まで
とどかせたい
裸に
ワンピース着ただけの
兵隊を
肉の合間から
こそげおとして
もういちど
土くれたい
  soon
となりから
ながれこんでくる
体温の名前を
だれも
しらないだろう
それでも
わたくしという
震えを
おしえたがるのは
  son
でてきたからだろう
くらくて
せまい
あたたかいところから
ひきずり
だされたからだろう
あなたに
  sun
もうずっと
霧がすごい
白い 白い
白い ばかり
目をほそめても
輪郭を
つくることはできない
もうずっと
手のひらを
閉じて開いて
まぶたを
くっつけて
はなして
くりかえし
くりかえし
ずっと
霧だけがすごい
  sun
いいかげんだ
だらしない
はがれかかっている
  sos
たしかめさせておくれよ
内臓の場所を
つっこませておくれよ
骨と骨で
しめつけておくれよ
  daughter
そうして
忘れさせてくれよ
歌も
ひかりも
みたこともない裸も
忘れさせて
台風のような凶暴
地震のような残酷
そんなものは
だれひとり
もっていなかったと
思い出させて
バターナイフなんかじゃ
だれひとり
死なないと
もういちど
   sun
それはただのことばだ
   son
それはただのひとだ
   sos
二度と思いだされない
   soon
ずっと霧がすごい
   moon
輪郭がぬりつぶされて
   mom
しろい しろい しろい しろい
あこがれを かねの ように
ならし あこがれが かねの ように
われれば まっくらが くる
と おもっている daughter
まっくらは こない 
まっくらは いつまでたっても
こない しろい しろい
ずっと 霧が すごい
   son
もういっかい やってくれないか
さいしょから けいべつまで
もういっかい やりなおしてくれ
   mom
あんたなんか きょうみない
ただ ぐうぜんに すべりおちた
からだ ふいてやっただけ
   sun
空は おちてこない
山は くずれない
わたしたちは
はいまわる なまぬるい 温度



自由詩 Ang. Copyright イシダユーリ 2010-03-01 21:37:42
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