自己欺瞞
花形新次
今の俺は俺ではない
この俺は仮の姿だ
そう言いながらもう何年も過ぎた
「そろそろ目を覚ましたらどうだ。」
視線を真直ぐ俺に向け
あなたは諭すように言う
あなたの言うことに
間違いがあった例はない
それは俺にも分っていた
鏡に映った二日酔いの俺は
代替可能なその他大勢の顔だ
確かにあなたの言うとおりだ
きっとそうなのだ
俺は勘違いしていたのだ
しかも
とてもとても恥ずかしい勘違いを
いっそのこと
赤い快速特急に身を投げるか?
恐ろしいほどのスピードに
そのブクブク太った脂肪の塊を
木っ端微塵にしてもらうか?
できっこないのだ
だから嘘でも
この俺が本当の俺なのかと
問い続けなければならない
死ぬまで