自己欺瞞
花形新次

今の俺は俺ではない
この俺は仮の姿だ
そう言いながらもう何年も過ぎた

「そろそろ目を覚ましたらどうだ。」
視線を真直ぐ俺に向け
あなたは諭すように言う

あなたの言うことに
間違いがあった例はない
それは俺にも分っていた

鏡に映った二日酔いの俺は
代替可能なその他大勢の顔だ
確かにあなたの言うとおりだ
きっとそうなのだ
俺は勘違いしていたのだ
しかも
とてもとても恥ずかしい勘違いを

いっそのこと
赤い快速特急に身を投げるか?
恐ろしいほどのスピードに
そのブクブク太った脂肪の塊を
木っ端微塵にしてもらうか?

できっこないのだ

だから嘘でも
この俺が本当の俺なのかと
問い続けなければならない
死ぬまで






自由詩 自己欺瞞 Copyright 花形新次 2010-03-01 21:03:53
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