散歩
こしごえ

あるいていると
ふいに、なくしものがあるような気がして
ポケットに手をつっこみ
もぞもぞとやる。ほそいろじの電灯のもと
真夜中が
ひょっ、と背すじをなぜる
気配に目をみひらく

(ふりかえっては いけない。
とだれかが ささやく
遠い未来が、あるとしたら
わたしは現在
つかんだものを
おくり届けなければ ならない。

あなたへと
つづくひかりを
どうかわすれないで

道路元標を黙視する
大通りに出ると
信号と自動販売機が会話していた
ひと気の無い風のなか
あいのことを語りあい
わたしは空であるらしいほうをあおいだ








自由詩 散歩 Copyright こしごえ 2010-03-01 15:20:16
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