散歩
こしごえ
あるいていると
ふいに、なくしものがあるような気がして
ポケットに手をつっこみ
もぞもぞとやる。ほそいろじの電灯のもと
真夜中が
ひょっ、と背すじをなぜる
気配に目をみひらく
(ふりかえっては いけない。
とだれかが ささやく
遠い未来が、あるとしたら
わたしは現在
つかんだものを
おくり届けなければ ならない。
あなたへと
つづくひかりを
どうかわすれないで
道路元標を黙視する
大通りに出ると
信号と自動販売機が会話していた
ひと気の無い風のなか
あいのことを語りあい
わたしは空であるらしいほうをあおいだ