ノンフィクション 『回転すし屋にて。』
くろきた

えー… ちょっと待ってよー…

これはないでしょう。ねぇ。

もっと別の場所はなかったの?

終わったわ。私。

今世紀最悪だよう、神さまのばかー。


こんな、こんな、

回転すし屋で、大好きな彼と会うなんて。

それも、偶然ばったり。


緊張して、箸からすしがボロボロおちる。

ネタがうまく噛み切れない。

シャリが喉を通らない。


こんな時にかぎって、何も知らない母さんは

「ほらほら、どんどん食べんちゃい」

って、食べもしない皿をとっていくし。

気が付いたら卵ばっか食べていた。


あぁ、大好きなあぶりサーモンが行ってしまった。

あっ、げそが来た! よし、

と、その瞬間彼と目が合う。

あ・・・(きゅん)

って、ときめいてる場合じゃない!

あーあ、げそ行っちゃったよ・・・

しょうがない、えんがわで手を打とう。


・・・やっと獲得したえんがわは、カラカラに干からびていた。


どうして、こんな、

すし屋に来てこんな目にあうのよっ!

てゆーか、なんでこんなロマンもへったくれもないような場所で彼と・・・


そう思いながらえんがわを口に入れた瞬間、

また彼と目が合った。

彼は笑っていた。

教室では見たことのない笑顔で、

私に笑いかけてくれた。


もぐもぐしながら、

口の中の干からびたえんがわが、

急においしくなった。




自由詩 ノンフィクション 『回転すし屋にて。』 Copyright くろきた 2010-02-28 20:49:33
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