サから始まる語義凡例・サ〜シ
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ザーメンズ・リヴ
 1970年代に隆盛を極めた女性解放運動ウィメンズ・リヴにより、実質的社会進出
 と概念上の地位向上を成し遂げた女性に齟齬を来した男性が21世紀※1 に掲げた
、保護主義的男性解放運動。
 
 精子数減少の原因については前世紀後半から内因性外因性ストレスや環境ホルモンが
 指摘されていたが、今世紀になってXY遺伝子宿命説が提起された為、人間の精子を
 絶滅危惧種に指定しワシントン条約で世界的に捕獲、取引を禁じようという指標を掲
 げる保護活動を展開するに至った。

 具体的活動については今のところ、厳格な温度管理と射精の抑制、アンドロゲン分泌
 促進因子となるべき良質たんぱく質の摂取、あるいはAVスクリプトに於ける女性再
 奴隷化の幻想共有、ひいては自ら女性化することにより女体の誘惑を退ける、といっ
 た指針を表明するに留まる(運動母体は一般男性に在るが、星座占いを毎号掲載して
 いるメンズ・ノンノのモデルをイメージするとわかりやすい)。
 
 この反動的運動は必然的に同性愛や幼児性愛へ行き着くと指摘する社会学者もおり、
 その排他性から既存の方法論で行き詰まった場合には尖鋭化(ヒー・シェパード化)
 するのではないかとの懸念を表明している。

 ※1前近代的な男性観に毒されていた20世紀の男性には、こっぱずかしさのあまり
   機運が盛り上がらなかった。

 
殺風景
 婚姻経年数が10年に達した夫婦又は夫婦関係の謂い。

 関係とは対置に於ける相互干渉であり、概して間隙に生じる堆積物には何の意味も
 ない。家財や子供の発熱を共有する、それが一体何だろう。建造物の意義が人類の
 建設行為(観念体系の具現化)に存するのと同様、その邂逅にしか大義が存在しない
 にも関わらず、2者結束・同化の幻想に基づく婚姻自体が根本的誤謬である。

 反語的に「継続は力なり」という痔核にも似た標語を思い出すが、輪転に前進はあれ
 上昇はないものだ。惰性を尊ぶ人物は、堕落に浴する停留状態を「わたしの人生」と
 呼ぶ。ましてまぐわう犬が喘ぎながら「あなたとわたし」の関係性を追認する、その
 1分間をスーパースローで暮らしたところで得るものは知れているのだ。国家がこれ
 を制度化して奨励・支援するのは、一重に社会通念上の囲い込みによる税収確保の為
 である。


殺戮
 思惟、生殖に次ぐ人類の嗜好。

 神を創造した人類のレゾン・デートルは神の模倣にあるから、常に人為の超越を目
 指す。その実現は言わずもがな創造と破壊に集約される。創造については現在、農
 産物と家畜の遺伝子操作に留まるのでここでは触れない。

 神域への到達が20世紀の核兵器開発であることは論を待たず(オッペンハイマー
 博士がノーベル物理学賞から洩れたのは、神威の実現が賞罰尺度を凌駕したからに
 他ならない。繊細な博士は悔悟のあまり自らを発狂寸前にまで追い込んでしまった
 が、人類の進化速度は社会という構成母体の機運に在るので個の突出が負うもので
 はない)、こうして字義通り人差し指1本で事済むその行使もまた然り、我々が破
 滅を回避し得るかについては否である。何故なら神はおのれの究極性を否定するこ
 とはできない。この自己膠着に拮抗し得る力学は地球に存在しない。
 万物の摂理を統括する絶対者としての神が初めて観念世界を脱し、人間の恣意の下
 に物理作用として降臨したのがあの瞬間、広島・長崎上空だった。
 それは決して呼ばわることのない、心を持たぬ神であり、絶滅の、沈黙の君臨であ
 って、我々衆生としては科学誌の表紙に刷られる終末時計のように、ただ固唾を飲
 んでカウントダウンに臨むしかないのだ。何故なら神はその破壊力よりも、放射能
 半減期の威力に於いて我々創造主の手に負えない。

 それでも順延の試みは僅かな余地として残されてある。存続に終止符を打ちたくな
 ければ、この現状を永世に亘って維持するしかない。
 その方法論とは言語であり、これが我々人類の宿業であると共に唯一残された希望
 でもある。舌先で打ち出され、儚く消える音節の意味合いのみが数万基のミサイル
 に搭載された終末の抑止力とは、皮相な上にも皮相な必然と言える。言葉しか持た
 ぬ我々は、だから話し合いを続けるしかない。議論し報告し妥協し締結し提案し続
 けなければならない。
 アメリカの単細胞どもが信奉する、パールハーバー奇襲の相殺事案としての原爆投
 下などという稚拙な論理を口にする限り先がないのも言わずと知れたことで、核廃
 絶に向け実にささやかな布石の試みを行なったバラク・オバマはゆえに早速、国内
 経済政策や医療保険制度改革に失敗しようと史上最も偉大な指導者の1人と言える
 のである。
 たとえ束の間のファンタジーに終ろうとも、歴史に明滅する光は可能性を示唆し続
 けるだろう。それは我々の与り知らぬ未来で受け取る側の希望を醸成し得る、爪の
 垢ではあるのだ。


幸せ
 尺度次第でファスナーのツマミのように上げ下げ出来る自覚的充足を言う。
 食えなくなってこそ飯粒が銀に輝く視神経の不思議。その意味では寧ろ悔悟的な感
 覚である。

 私が精神的充足状態にあるのは、ダラダラしている時、眠っている時。本当に? 
 食べている最中エッチしている最中は寧ろ不幸な気もする。本当に? 何かしら読ん
 だり考えたりしている時。違う。何も考えていない時が幸せだ。生まれて来なければ
 もっと幸せだった。本当に?


死活問題
 生死に関わったためしがない、大したことのない問題。利害衝突時の便用語。


処女
 鏡の前や窓辺で女がつく嘆息の主要構成因子。

 肌艶の喪失や時間軸の誤用、何らかの誠心をくれてやる相手が適切でなかった悔悟
 から生じる(ただ、そこに悲愴は微塵もない。人類雌の精神性はゲンキン、つまり
 プライオリティを常に現在に置くがゆえである)。

 価値体系の成立は古く、協定的に繁殖用具として自家製品を相手へ差し出す際に、
 新品を弁別して有利な商取引を目論んだ後期縄文時代の因業おやぢまで遡ることが
 できる。
 ただそこから導き出された思想自体は男の妄想に発しており、破壊欲を満たすに過
 ぎない、使い捨ての無意味な観念である。何故なら性具としての女性消費は処女喪
 失後にこそあり、当の女にとっても快楽を知ること、出産により力関係の逆転を謀
 ることに価値が集約されるからである。
 つまり処女の実体性とは、汚されるハンカチに投影する感傷でしかない(無論ハン
 カチ自体は何の感傷も抱かない)。ゆえに膜でもないものに膜をイメージする習慣
 が破れない。童貞の亀頭が筆下ろしによって裂けるのであれば、このような幻想は
 誰も抱かぬはずである。


処女苑
 男を知らぬ若年女子という稀少肉を焼いて食う試みの為の高級焼肉店。

 好事家、芸能人を顧客に取り込む事で大衆に対する自己存在理由の定義づけを行な
 う(マハラジャ商法※2の踏襲)事業体の代表格。
 チェーン展開の店舗は無煙式、個室型。また屋号を冠したタレ、ドレッシング販売
 を全国展開、自己の組織化・資産の体系化に失敗した貧乏人の矜持をも取り込む試
 みを展開する。

 ※2ラーメン店内壁面の色紙を拡大解釈する心理に想を得た商法。
  2次元の色紙をVIPルームに3次元化し、それにまつわる逸話で憧憬という
  4次元世界を構築・提供。アメリカでは54商法と呼ばれる。


しわ寄せ
 万古不変の物理、永劫普遍の条理。


人生/生活
(人生) 甘納豆を夢見ながらネズミのクソ拾いに費やされる人間個体の生命活動時間
     をいう。
(生活) 甘納豆だと思いながらネズミのクソを食う状態のこと。個体によってはネズ
     ミのクソだと知りつつネズミのクソを食う状態。


散文(批評随筆小説等) サから始まる語義凡例・サ〜シ Copyright salco 2010-02-28 11:31:00
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