あいしてるだけが言葉じゃない
あぐり




*あいうえおにあこがれている


あってみたい。まだ見たことない朝焼けに ぴったりの名前、つけられる人と。


いまだけを生きているから。いまだけを生きていたいと思っているから。


うらがわに水色で書いてよ、好きって。それに毎日、日記書きたい。


えりもとの細い髪をとってあげたら それは桜色に光った。


おいかけていさせてほしい。おいついた そのときには、ぎゅっと、わたしに恋して。



*かきくけこによりきょりをおきます


からだだけ傍にあっても仕方ない。でもそのぬくもりを手放せないまま


きらいだ、と 言えないきみの「好きじゃない」 綺麗なグレイが滲んでいった


くちづけを最後にしたのはいつだろう。忘れてるのはそれだけじゃないけど。


件名に「距離をおきたい」なんて書く あなたの指先はそれでも熱いの?


これからもわたしと過ごしていったって あなたはしあわせを知ろうとしない



*さしすせそはさみしいのです


さみしくてまるまるしかない肌のうえ、やらかく毛布がひかっているの


しらなくていいことばかり気付いてた。きみにはもっと気付かせていた。


すらすらと流し続けた嘘よりは 躊躇いがちに零れる涙で


セレストブルー。呟いたきみの睫毛に 口づけをしている、吐息は溶ける。


そらしてる右足の指。きっといま きみは誰よりさみしい生き物。



*たちつてとだけでたびにでよう


タイミングはかって飛んだ。満月に 届かないって初めて感じた。


ちゃんと息、止めて泳げばあの海の 終わるとこまで行けるよ、きっと。


墜落。痛くはなかった。なんだか恋も悪くないみたいです。


テトラポット あんな風に揺るぎなく きみの傍にいれたら良いのに。


とおくまで行ったらきみを忘れること 少しは楽に出来るだろうか



*なにぬねのであまえられたら


なにもないなんてあなたに囁いて わたしだけのものにしたくて


にじんでる赤さを覚えないのなら わたしの肌に二度と触れるな。


ぬくもりに名前がないから時々は 目を瞑って思い込むのね


ねぇ、ぜったい、わたしより先に寝ちゃ嫌よ。そんな台詞でねだってみたい


のどおくでねばつく声を溶かしたら たぶん冷たいクリムゾンです。



*はひふへほにしかひみつはいえない


はみだした気持ちはぜんぶビニールに 入れて燃えないゴミにします。


秘密なら沢山あるけどそんなのは わたし以外しらなくて良い


ふつうに生きています。だからもうどんな過去も未来も些末。


平均値だしたらぜんぶ当てはまる。そんな人になりたかったな。


ほしかったきみのやさしい言葉にも なにか小さな秘密があるんだ



*まみむめもかたてにふりかえる


まちがいと言いたくないのは間違い? だっていつでも本気だった。


ミントティー飲んだ午後にはさよならを したあの時の声を味わう


むかしとはまだ言えないくらい鮮やかに 覚えているんだ、あの人の癖


メールではちゃんと笑って話せるよ。それでも二度と会いたくはない。


もしかしたら傷付いていたんだろうか。謝られた途端、泣いてしまうから。



*やゆよみたいにやさしくして


やわらかくわたしを縛る毎日に きみのしあわせがあるのかしらない


ゆるませたわたしの目元にきみの名を 描くとしたらチャイナホワイト


よるなのに指が冷えない。だってきみ わたしを絶えず浸しているから。



*らりるれろでちいさくおどろう


来週、もしお暇なら海岸で わたしとサティを聴きませんか?


理屈っぽいあなたの寝癖を盗み見て 潮風の中、小さく歌う


ルーペ越し、透明な砂覗いたら 瞳のまたたく音が聞こえた


冷静なその横顔がゆうるりと静かに微笑む。そんな音色。


ロビンソンみたいにひとりになってもさ、ハミングしてよ、波に重ねて。



*わをんがずっときしんでるんです

わかってよ。諦め癖があったって、こぼしたくない涙があること。


をとこだと、きみと喧嘩した朝は、そんなふうに呼んでみたくなる、ごめん。


ん。わかった。その言葉で何グラム さみしいかたまり飲み込んだだろ。






短歌 あいしてるだけが言葉じゃない Copyright あぐり 2010-02-27 23:54:54
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