ノート(緑透火)
木立 悟



花が居て
狂いたい
と言った
なにもしてやれないので
川にうつる枝のなかに立ち
はらわたの森をひらき
ここにお入り
と 言った


蝶が来て
狂いたい
と言った
なにもしてやれないので
壁にうつる川の光の前に立ち
はらわたの森をひらき
ここにお入り
と 言った


私が居て
狂いたい
と言った
なにもしてやれないので
川をわたり 自転車に火をつけてから
はらわたの森をひらき
ここではない
と 言った


誰もいなくなってはじめて 
あなたが
狂いたい
と言った
なにもしてやれないので
川を流れる名前をすくい
はらわたの森をひらき
ここに はじまる
と 言った



かなえられない願いたちが
さまよいのなか立ち止まり
川の向こうで燃えつづける
鏡と光の歯車を聴いていた





自由詩 ノート(緑透火) Copyright 木立 悟 2003-10-06 07:41:21
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