秋のカルテ
A道化


ビルディングの肩はとうに壊れていて
投げ損ねられた昼がアスファルトで砕け続ける
どれが致命傷なのかわからないくらいの夜が始まる
黒々と割れたビルディングの窓は
誰かの死に愕然としたまま死んだ眼窩のよう
そこに、点滅信号機の黄色い諦めが付着しては消え
付着しては、消え


アルコールを、アルコールを
昼を洗い落とす為には少しだけ窒息が必要だという処方箋を偽造して
喉へ喉へと逆流する咳に似た方法でのアルコールを、アルコールを
求めながら
昼の破片を、更に更に、雑踏がわざと踏み砕き始める
砕ける音は表面的には笑い声に似ている
空気感染する笑い声がどこかの眼窩に付着しては消え
付着しては、消え


ミキサーの刃のように無差別に
風は昼を踏み砕く雑踏を損なってゆく
洗浄とアルコール消毒、洗浄とアルコール消毒
繰り返された雑踏の損傷面はただ微かに肌寒いだけで
ふと
誤って秋と呼ばれ続け
いつの間にかどこかの眼窩を愕然とさせているのだろう



2004.9.29


自由詩 秋のカルテ Copyright A道化 2004-09-29 09:31:20
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