失墜する文明
真島正人


風の音が聞こえる

戸外は雨だ

脹らんだ大きな雫が
木の葉の表面を滑る

熟れすぎた文化のなれの果ての
決済の時間のように見える

カーテン越しの
切れ長の瞳は
獣たちと対峙している

優しい毛並みを創造しながら
口の中に収められた牙の鋭さにおびえている

どこまでも
距離を保たなくてはならないのだと

音楽の愉楽に

耳を明け渡すこともできずにいる

ねじが巻かれている
糸がより戻されている

文化とはときには
同じ糸から新しいセーターを編みなおすようなものなのだが

もしかするとそのための機械の構造、そのものかもしれない

僕の眼前で
すべてがほどける

失墜した文明が
鉄と錆からまた星を作る

だが
星は火花の中にしか生まれない

火花は人に涙しか与えない

作りかけた文明は
砂漠の遺跡に過ぎない


自由詩 失墜する文明 Copyright 真島正人 2010-02-25 02:53:38
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