風の音が聞こえる
戸外は雨だ
脹らんだ大きな雫が
木の葉の表面を滑る
熟れすぎた文化のなれの果ての
決済の時間のように見える
カーテン越しの
切れ長の瞳は
獣たちと対峙している
優しい毛並みを創造しながら
口の中に収められた牙の鋭さにおびえている
どこまでも
距離を保たなくてはならないのだと
音楽の愉楽に
耳を明け渡すこともできずにいる
ねじが巻かれている
糸がより戻されている
文化とはときには
同じ糸から新しいセーターを編みなおすようなものなのだが
もしかするとそのための機械の構造、そのものかもしれない
僕の眼前で
すべてがほどける
失墜した文明が
鉄と錆からまた星を作る
だが
星は火花の中にしか生まれない
火花は人に涙しか与えない
作りかけた文明は
砂漠の遺跡に過ぎない