コブの無いひと
恋月 ぴの
先輩ってまんまセブントゥエンティーなんですね
褒められているのか
それとも貶されているのか
一回り年下の後輩が私の耳元で囁いた
街中でも見かけるあのスタイル
脚の短さを隠そうとしてパンツ下げているのかと思ったら
どうやらそうではないらしい
ギャングスターをリスペクトしているとかだけど
駅の階段で躓いたりしないのだろうか
そんな余計な心配をする私って
おせっかいなおばさんなのは間違いなくて
老後の備えと積み立てる株価気になる夕刊を閉じる
もっと身軽だったならいいんだけどね
疲れたが口癖になってエスカレーター乗っているし
田舎の母を呼び寄せるべきなのか悩み続ける私がいて
孫の顔早くみたいとせがむ言葉煩わしくもあり
コブの無い駱駝は馬に過ぎないなんて歌が好きだったあの人は
駱駝の吐き飛ばす唾が臭いの知っていたのだろうか
そしてこれ以上は迷惑かけられないからと
私のもとを去っていった身勝手さ
ハンガーにかかったままの黒いコートを片付けられず
ひょこっと帰ってくるんじゃないかと淡い期待で
ひとり寝の寂しさを紛らわし
これってまさに演歌の世界ねと自嘲しながらも酔いしれたっけ
梅の便り聞く頃には実家へ戻ってみようかと按配しながら
オリンピックでもとテレビをつければ
パンツ下げたお兄さん達がハーフパイプに挑んでいて
アナウンサーがマックツィスト!と叫ぶ度に
ピクルスを摘んでのけてた優男の指先こころ掻き乱す