きみのかわりに綴る
高梁サトル


木洩れ日おちる
春の小道
端はにゆれる
野の草の
やわらかな
つややかな

風撫でる 葉先
 (絡めた小指)



陽射しが 美しい絵画の色彩を奪っていくと言う
きみの眠りに就いたその 安らかな顔
頬に無数の滴を伝わせて 握った手の甲にキスをする
深い井戸から水を汲み上げてこよう 再び開く目蓋の為に
冷たく冴えた潤いで 渇いた喉を充たせるよう

何度愛しさを感じたかなど 数える必要はない
この限られた細胞は そう使われるように用意されている
折られて果つるが身のさだめ そう花が嘆かないのと同じこと



二度誓えぬ誓いを立てた 夜のような朝からずっと



旗に泥を投げられても 武器を持たずに撃ち殺されても
それに不快や 不幸を感じる心は遠い
あの瞳が 何を見詰めていたか知っている

告げたい言葉が今 すべて見つからなくても
持ち合わせた ありふれた何かであってはならないという
自分をなだめながらする呼吸が 胸の内に降り重なって
積雪を喜ぶ晩 明朝輝く銀世界を願いながら
眠りについた 子供の夜を何度も思い出す



顔をあげれば
ゆらめく瞳
静寂湛えた
やさしさ護る
やわらかな
つややかな

風撫でる 睫毛
(絶する想い)


自由詩 きみのかわりに綴る Copyright 高梁サトル 2010-02-21 07:12:51
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